2020年10月8日木曜日

【LINEで発見!!たまごっち】ラブリっちちゃんぎんじろっちくん物語④(終)

 

                                         
「ねえ、ぎんじろっちくん」
「えっ?なんだい?」
「わたし、ぎんじろっちくんの
 お嫁さんになってあげてもいいよ」

わたし、ラブリっち。
とうとう言っちゃった。

「ほんとうかい?ラブリっちちゃん。
 とてもうれしいよ!
 でも・・・」

ぎんじろっちくんは
なんだか少し困ったみたいな
顔をした。

「ぼくのとうちゃんが
 何日も帰っていないでしょ・・・?
 とうちゃんの意見も
 聞いてみたいんだ・・・」

そうだよね。
ぎんじろっちくんは
おとうさん思いで
やさしいんだものね。
そんなやさしいところもあるから
好きなのかもしれないな。

「そりゃね、ラブリっちちゃん、
 とうちゃんはいつも
 ぼくに言ってたよ。
 ぎんじろっちの選ぶ相手なら
 きっと素敵なたまごっちに決まってるから
 とうちゃんはいつでも大賛成だよって。
 だけど・・・
 やっぱり
 ラブリっちちゃんと一緒になるときは
 とうちゃんの目の前で
 祝福してもらいたいんだ・・・。
 だから、今回はごめんよ・・・」

わたしはがっかりして
夕暮れの街を
とぼとぼとお家に帰ったわ。
ママが特性手作りお弁当を
用意してくれてね、
わたしの大好物なんだけど
食べたくないの。
ひとりで部屋にこもって
明かりもつけないで
ぎんじろっちくんのこと
考えてると
なんだかもう
世界が終わってしまったみたいに
思えてきて・・・。
ふぅ・・・あしたからどうしよう・・・。
ぎんじろっちくんに
どんな顔して会えばいいのかなぁ・・・。
わからないや・・・。
そういえば、おなかすいたなぁ・・・。
でも、なんだか疲れて動けないや・・・。
ママ、おべんとう取っといてくれるよね・・・。
たこさんウィンナー
ちゃんと入れてくれたかなぁ・・・。
うさちゃんおにぎりにつける目は
三角じゃなくて
四角にしてって言ったのよ・・・。
・・・・・・

窓から差し込む光で
わたしは目を覚まして起き上がった。
いつのまにか
眠っていたのね・・・。
そうだわ!
おべんとう、おべんとう!
ママー!おはよう!
わたしのおべんとうは?
ママから特性手作りお弁当をもらって
ふたをあけると・・・。
あったあった、
たこさんウィンナーが5つも!
うさちゃんおにぎりの
目はきれいなまんまるだわ!
ママ、ありがとう!
ちょっと元気になったかも!
あれ?
窓の外がだんだん
薄暗くなっていくよ。
もしかしてわたし
1日眠ってたの!?
大変!
ぎんじろっちくんが
おなか空かせてる!!
早くあつあつおでんを
持って行かないと!
すると
まるで待ってましたと言うように
ママは力作のあつあつおでんを
わたしに持たせてくれたの。

ピンポーン
お家の呼び鈴の音がした。
だれかしら?
「はーい」
「ラブリっちちゃん、
 きのうはほんとうにごめんよ」
「ぎんじろっちくん!!
 わたしのほうこそ
 きょう行けなくてごめんなさい!
 おなか空いたでしょう!」
「大丈夫だよ。
 とうちゃんが戸棚にたくさんしまっていった
 カロリーバーをみつけたんだ。
 それより・・・」
「そうだわ!
 おでんいただきながら話しましょ。
 さ、中へどうぞ」

ふたりが居間のテーブルに着くと
ママはお茶をいれてくれたあとで
少しはなれたところに座って
心配そうにこちらを見ている。
「ぎんじろっちくん、
 おでんはまだ、あつあつよ。
 冷めないうちに、めしあがれ」
「ラブリっちちゃん、ありがとう。
 きょうはぼく、
 ラブリっちちゃんの大好きな
 やきいもを持ってきたんだよ」
「あら?
 わたしがやきいも大好きだって
 どうして知ってるの?」
「そりゃあ、知ってるよ。
 きみ、テレビでときどき言ってるじゃない」
「見ててくれたんだ。
 ありがとう」
「とうちゃんが帰らなくなってからは
 よく見てたよ。
 とくに夜はひとりでさみしいからね・・・
 テレビに映っている
 元気な人気者のラブリっちちゃんを見てると
 さみしいことも忘れてなごんでいたよ。
 これからも
 さみしい夜は
 テレビでアイドルのきみを
 見ているよ」
「そうなの・・・。
 わたしはこれからも
 アイドルのお仕事もやっていくし
 ずっとあなたのそばにいるわ・・・。
 でも・・・。
 それだけじゃだめなのよ。
 わたしは
 世界でほかにどこにもいない
 あなただけの
 特別なわたしに
 なりたいのよ」
「ありがとう。
 それはわかるよ。
 でもね、
 この世界中で
 こんなに
 毎日一緒にいて
 こんなにいつも
 ぼくのことを
 支えて助けてくれたのは
 ラブリっちちゃん
 きみだけなんだ。
 それだけじゃあだめなのかい・・・?」
わたしはなんだか
納得いかない気もするんだけど
ぎんじろっちくんの言うことは
一応すじが通っているから
うなずいてしまうのよね。
わたしは
ことば少なげに
おでんとやきいもの
自分のぶんを
食べ終わって
ぎんじろっちくんを
またあしたね、と
見送ったの。

つぎの日からまた
わたしは
ママのつくったあつあつおでんを
ぎんじろっちくんのお家に
持って行って
ぎんじろっちくんのおとうさんの
帰りを待つ毎日が
続いていくの。
わたしはしあわせよ。
ぎんじろっちくんは
相変わらず
何考えてんだかわかんないけど
なんかね、
ときどきすっごくやさしいの。
だから
まぁ、いいか。って
思っちゃうのよね。

そんな時間がもう
何か月、
何年と経って・・・。
ある日のこと。
わたしはまた
ぎんじろっちくんと一緒に
ママのつくったあつあつおでんを
食べていたの。
そうしたら、ぎんじろっちくんが
「ん?
 玄関の前に
 だれかいる」
「えっ?だれかしら?」
「どなたですか?」
「ぎんじろっち。わしだ。
 帰ったぞ」
「とうちゃん!!」
(おしまい)


ここで、
聖書のことばを1節、
ご紹介します。
「主の御前で
 へりくだりなさい。
 そうすれば、
 主があなたがたを
 高くしてくださいます。」
(ヤコブの手紙4章10節)